もう随分昔の事。音楽で飯を食う前にサラリーを2年間だけやった事があった、生活にも困らずに一人暮らしもしてて、車なんかも持ってたけど、意を決して辞めて今がある、そんな辞めてすぐの事だ。当時の収入が激変して家賃も払えないくらいになった、車も売った、、、税金もまとめて払えと通告が来た、、、払えないのなら財産を差し押さえるとまで役所に言われた、、、応援してくれてた当時の会社の同僚や女子社員たちが日替わりで家へ来て飯作ってくれたり、励ましてくれた。情けないなぁ〜、、、って思って、夜も寝れない日々が続いてた、、、好きな事で生きて行くのってこんなに大変なんだ、自由業になって自由になるのってこんなに不自由なんだって毎日思ってた、もう25才くらいなってたと思う、そんな日々が三ヶ月くらい続いてたと思う、もう季節は冬を迎えてた、夕方から仕事だったのでバイトも限られてた、そこで青果市場でバイトする事にした。髪の毛も今じゃ当たり前だけど、金髪近くに染めた、自分へのもう戻れないと言う意味だった。
朝5時に起きて金がないので20分くらいかけて歩いて通った、市場は売る人間、買いに来る人間で毎朝ゴッタ返してた、俺は大手のスーパーなんかに卸す比較的大きな会社のバイトだった、競りに出る人、競り落とした野菜を運ぶ人、加工するパートのおばちゃん、トラックに積み込む作業、、、競り以外は全部助手として手伝わされた、、、一日に30キロの白菜を100箱トラックに一人で積み込んだ事もある、、、社員も高校中退とか、もと暴走族とか、車に命かけてますヤンキーとかばっかで10代が多かった、、、名前も憶えてもらえずにいつも「お〜いアルバイト!」って呼ばれてた、、、仕事は過酷でなんでもやらされた、冷凍庫に1時間入りっぱなしで作業する事もあった、、、唯一の楽しみは昼飯で金のなかった俺は食堂で肉炒めとごはんで¥300也、勿論豚肉だけど、安くて旨かった。飯を食った後は一人で立体駐車
場の屋上でボーッと空を眺めてた、なにやってんだぁっていつも自分に言い聞かせた。そんな中若い社員の一人が、いつものように飯食ってボーッとしてると近づいて来て、「あの〜バンドか何かやってるんっすよねぇ?」俺は「今はギター教えてるよ、、、」敬語なんか使われた事もなかった、、、。「俺長渕剛好きなんすよ!」それから決まってそいつと昼休みは一緒に過ごすようになった。
ある雨がザーザー降りの日に、いつものように白菜を100ケーストラックに積み込み、頭から靴、パンツまでグショグショになった(良くある事)、、、それはボロ雑巾のようだと自分でも思ってた、グレーのコーデュロイのズボンは緑色になり、長い髪の毛は悲惨な状態だった、、、そんな大雨の日に勿論金もなく、仕事を終え歩いて大道り沿いを歩いて帰った、、、大雨だしいつもより落ち込んでた、、、「何やってんだ俺は、、、」下しか見て歩いてなかった、、、勿論大雨なのに傘もささず、、、車が止まった、、、「碓井さん、、、」それは前の会社の営業の女の子だった、、、「何してるんですか、、、」と不思議そうに、、、俺は「ちょっとね、、、」顔もあまり見れない、、、「送って行きますよ、、、」と雨に打たれた野良猫を憐れむような目だった、、、俺は「いいよ、、、すぐ近くだし、、、」彼女は「、、、、、、」多分これ以上言葉もかけれないような悲壮感が俺から漂っていたに違いない、俺は一言「ありがとう」って言って歩き出した、顔さえもあまり見なかった気がする、、、するとなぜか涙があふれて来た、、、気を張ってた一本の糸が切れた気がした、、、どしゃ降りの雨で涙なのか雨の雫かは分からないような状況だった、、、振り返るとまだ車はハザードランプをつけて止まってた。
悔しかったし情けなかった、、、。自分が。



旨いもん食えるようになって感謝します!